how's it goin' ?

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孤独ではない、100kmの道

えちご・くびき野100kmマラソン

「えちご・くびき野」を走る幸せ

フィニッシュ後に大会本部でスタッフにお礼の言葉を述べたとき、「よろしかったら、どうぞ」と渡された大判の大会ポスター。普段なら荷物を増やしたくなくて断るはずなのに、それまでにさまざまな方から頂いた心遣いがよみがえり、また嬉しくなって、つい受け取ってしまいました。

ポスターに書かれた「孤独ではない」のコピー。この言葉の意味を、こんなにも身をもって感じられることが、他にどれほどあるでしょうか。

えちご・くびき野100kmマラソン

10月5日・金曜日、スタート会場のリージョンプラザ上越で、前日受付を済ませました。館内でこれから始まる前夜祭に少しだけ後ろ髪を引かれつつ、体調維持を優先して宿に戻ることにしました。帰りのシャトルバスがいないかと見渡したら、なにやらスタートゲート付近に人が集まっている様子。やがて、「ランナーの姿が見えてきました!」と、女性アナウンサーの声が。

・・・ん? 前日なのに、ランナー?

集まった人たちの視線の先を見やると、聖火ランナーのようにトーチを掲げたランナーがふたり駆け込んできます。とくに事前の案内も無く知らなかったのですが、それはスタートゲート脇のかがり火を点火するイベントでした。運営に力が入っている様子が伝わってきて、明日への期待が高まります。

会場へのアクセスは、大会前日/当日とも、直江津駅北口、サンプラザホテル、ホテルα-1、ホテル元気人と100kmスタート会場のリージョンプラザ上越を結ぶ路線、高田駅からリージョンプラザ上越を結ぶ路線、それに大会当日はリージョンプラザ上越と50kmスタート会場うみてらす名立を結ぶ路線にシャトルバスが運行され、私が利用した時間帯(前日午後と夕方、当日朝とフィニッシュ後)の直江津駅~リージョンプラザ上越は、いずれも十分な席数があって、とてもスムーズに移動することができました。

えちご・くびき野100kmマラソンのコースは、リージョンプラザ上越を出てくびき野を南下し、山沿いに東に進み、北上して海沿いを下り、最後はくびき野の "ヘソ" のような百間町へと向かう、上越市一周のワンウェイです。

えちご・くびき野100kmマラソン

中盤はずっと山の中。途中、大きな峠が4つ、その後もさらに小さな峠がひとつ待ち受けています。連れ合いに釣られた勢いでエントリしてしまった大会ですが、私にとっては初ウルトラ。もしも、こんな山道を含むと事前に気付いていたら、怖気づいてエントリしなかったかもしれません。(^^;

前日配布のガイドブックによれば、累積標高+1573m、-1567m だそうです。この数字は乗鞍天空マラソンを超えています。

えちご・くびき野100kmマラソン

実走したログをルート・ラボに取り込んだら、トラックポイントが多すぎると言われて保存できませんでした。走行ペースが遅いせいで、ログが膨らんだのでしょう。(^^; 仕方ないので、前半と後半に2分割したログを公開しました。動くログはこちらをどうぞ。

えちご・くびき野100kmマラソン 2012(前半)
http://yahoo.jp/KfECls
えちご・くびき野100kmマラソン 2012(後半)
http://yahoo.jp/JIT8vn

細かなコース取りは前回大会と異なる部分があるようです。道路の付け替えや安全面などの理由で毎回見直しているのだと思います。

4つの峠のちょうど真ん中51km付近に第1トランジットが、78.8kmに第2トランジットがあり、あらかじめ荷物を預け、着替えも出来ます。今回は天候に恵まれたので着替えの必要性を感じませんでしたが、いざとなればウェアもシューズも取り替えられるという安心感があり、ありがたい配慮です。

エイドは、給水、レストエイド、トランジットなど合わせて37箇所もあり、平均するとなんと3km以内で次のエイドが現れる計算になります。実際に走ってみても、エイドを1箇所ぐらい見逃しても心配ないと思えるほどエイドが充実していました。

大会当日、朝5時過ぎの100kmの部スタートゲートです。風も無く適度に涼しい穏やかな天候。号砲が鳴った直後に、なんと連れ合いのコンタクトレンズがずれてしまい、じっくりと直してからほぼ最後尾でスタートを切りました。それでもロスは1分30秒ぐらい。距離が距離ですし、先を急ぐ旅でもありません。

えちご・くびき野100kmマラソン

スタート直後、沿道から凄い声援の嵐を浴びました。まだ暗いのに、応援がこんなに多いとは思いもよりませんでした。大勢の「いってらっしゃーい!」の声に手を振りながら、まだ空けやらぬ街へ飛び出してゆきます。

途中までは集団がバラけず、ペースも上がりません。流れに身を任せ、キロ6分30秒ぐらい。ちょうどいい感じです。せめて峠越えの前まで、このペースを維持できれば・・・。

スタート前にはお腹が動いてくれず、5kmぐらいから徐々に動いて不安な状態になってきました。9.1km付近、最初の大きめのレストエイドに仮設トイレを見つけて入ることにします。

女性専用トイレがきっちり確保されているのは好感が持てるのですが、なんとそちらは空いているのに男子は数名が待ち状態。エイドを設営した場所の建物にもトイレがありましたが、同じ状態のようです。序盤の"大"は大人気(?)なのかもしれません。(笑)

まあ急ぐ必要はないと余裕で(?)並び、用を済ませて出てきたら・・・

えちご・くびき野100kmマラソン

あれほど混んでいたランナーたちの姿がほとんど見えず、びっくり。(笑) スタッフの方々の大きな拍手の中、最終ランナーがちょうどエイドへと向かってくるところでした。勝負は、まだまだ先! 一緒にがんばりましょう!

とはいうものの、さすがに焦ってペースを少し上げたら、1kmラップが5分50秒を切っていました。これだと後が持たないと判断してペースを落としますが、そのうちなんとか集団の最後尾を捉えます。

見渡すかぎりの青々とした水田を突っ切り、集落と集落との間を縫うように三和区から清里区、板倉区へと進んでゆきます。途中で複雑に曲がる交差点がいくつもありますが、誘導が確実でスムーズなので迷いようもありません。

えちご・くびき野100kmマラソン

ちょっとした集落があれば「ようこそ△△の里、○○区へ!」と横断幕が掲げられたり、「それなりに走れ!○○区」という看板が現れたり、玄関先では家族総出で手を振りながら「がんばって!」と声援してくれたり、笑みがこぼれる場面の連続。そしてこんな歓迎が、この先ずっと続くのです。

給水エイドには水、麦茶、スポーツドリンク、コーラ、レストエイドにはさらにバナナ、オレンジ、レモン、塩、おにぎり、梅干、団子、チョコなどが豊富に用意され、これなら何も持たずに走ったって不安は無いでしょう。エイドによっては区特産の餅や蕎麦、きのこ汁などの汁物各種も用意され、ランナーへの売り込み合戦さえ繰り広げられます。(笑)

えちご・くびき野100kmマラソン

蕎麦は何箇所かで供されていました。私はわりと最初のほうで頂きましたが、なんでこんなに美味しいんですか! 思わず、おかわりを頂いてしまいました。当たり前かもしれないけれど、いつも食べている東京の駅そばとは、到底比べ物にもなりません。同じ名前だが、あれは全く別の食い物に違いない。

走路上の誘導に立つボランティアの方々、それに沿道の人たちが、皆さん気持ちよく笑顔で声を掛けてくれて、どんどん気分が盛り上がってきました。こちらも「おはようございます!」と笑顔で返します。

そうこうするうち気が付けば30kmを通過し、牧区に入って道は次第に上り坂になってゆきます。街中40.5kmのレストエイドまでは何とか走りを維持したものの、山中へ分け入ってからの激坂は、予定通り(割り切って)歩きで乗り切ることにします。

えちご・くびき野100kmマラソン

斜度が10%とか、もしかしたら15%を超える区間も多いのではないでしょうか。周りの多くのランナーも、歩き混じりのようです。少しでも速く歩こうと頑張りますが、なかなか手強い急坂。そこを全く歩かずに走って登り切る凄い視覚障がいランナーに、あっさり抜かれてしまいました。そのランナーと平然と話などしながら駆け上がる伴走ランナーも、また凄いですね。

同じ視覚障がい選手を下りで追い抜き、上りでまた抜き返されるパターンを、その後何度も繰り返します。(笑)

えちご・くびき野100kmマラソン

やっとたどり着いた、第1トランジットのB&G海洋センター。ここまでで、およそ半分です。当然、辛いことは辛いのですが、考えてみれば私にとってすでに未知の領域に突入しています。ここまで無事にたどり着いただけでもラッキー。それでも足が売り切れた感じはしないので、飛ばし過ぎずに自重すればまだいけるかもしれません。

ただ長い下りをそれなりに飛ばしたせいか、肩がバリバリ、持病気味の腰にもかなり負担が来ていました。着地のたびに左足だけ足裏に痛みが走るので、アーチがヘタっている疑いも濃厚です。

えちご・くびき野100kmマラソン

長い待ち時間を承知で、思い切ってマッサージをお願いする決意をしました。救護テントの下で、3名の有資格者の方がボランティアで施術に当たっておられます。肩も少しほぐしていただき、左足裏にはテーピングをしてもらいました。マッサージはここだけでなく、大きなレストエイドの数箇所に設置されていました。

十分に休んだら、出発します。すぐに、また大きな峠がやってきます。

えちご・くびき野100kmマラソン

棚田をいくつも通り過ぎ、遠方には美しい峰々を望みつつ・・・ぜぃぜぃ、はぁはぁしながら、峠を越えてゆきます。次のエイドが、待ち遠しい!

峠では、続けざまにひょうきんな案山子が現れたり、「がんばっても、どうせ明日は筋肉痛」と書かれた看板が現れたり。苦しみながら、笑いながら、自分でもわけわからなくなりつつ進みます。

安塚区、大島区と山道を辿り、ようやく4つ目の峠を越えると、そこは浦川原区。そのうち、ほくほく線の虫川大杉駅が出てくるはずです。川沿いに下り、トイレ休憩を挟みつつ(相変わらず男子トイレが混んでいます)足の重さと闘いながらも、ひたすら重力に頼りきって何とか脚を廻してゆきます。

ほくほく線の高架下に出ると、エイドに続いて中学生の大声援とハイタッチに元気をもらって復活しました。どうして自分がこんなに応援してもらえるのか不思議に思うほど、もの凄い応援ぶりです。

浦川原駅付近を通過してから最後の峠に掛かります。この峠は短いながら壁のようでした。溜まった疲れに追い討ちを掛けぬよう、ここも歩いてしのぎます。(後から地図を確認したら、実にたいしたことのない距離と高さで、がっかりしました。(笑) )

75kmあたりで道が平坦になると、そろそろ吉川区の第2トランジット。アナウンサーにゼッケン番号を読み上げられ、荷物を持って待ち受ける中学生に声を掛けてもらいつつ、トランジットに駆け込みました。あまり休むと再スタートが困難になりそうで、さくっと給水してアイシングスプレーもそこそこに、次の区間へと挑むことにしました。

そこから80km、85kmと海岸へ向かうまっすぐな道が続きます。風景がちょっと退屈ですが、次々に現れるエイドに助けられて気分を維持します。足取りは限りなく重いけれど、自分でも不思議なことに6分15秒前後のペースを刻めているようです。

途中、ちょうどエイドを出ようとしていた連れ合いの友人を見つけて声を掛け、しばらく進むと、先行していた連れ合いの後ろ姿をついに捕らえました。しかしどうも足取りがおかしく、調子を落としている感じの走りです。掴まえると案の定、以前に故障した膝裏が痛いとのこと。これはマズい。危険です。ここからは(もしそうなったら悔しいけれど)もしもの場合のリタイアも視野に入れ、サポートしながら伴走することにしました。

意識的にペースを落として、85.4km地点、柿崎区のレストエイドに設けられた第3関門をふたりで通過。海沿いの旧道に出ます。相変わらずの温かい声援を受けながら、旧く静かな佇まいの家々が並ぶ街を通り抜け、美しい日本海に出ました。凪いだ水面が、うっとりするほど綺麗です。

えちご・くびき野100kmマラソン

このあたりで日が暮れ始めますが、走路には工事用に使われる明るい照明灯が設置され、不安なく走れるように工夫されています。

再び街中に入ると歩道が狭く、並んで走るのは人迷惑な感じになってきました。また細かなアップダウンの繰り返しが意外と多く、ペースが安定しません。連れ合いの膝はまだ何とか持っているようですが上り下りでは負担が大きいので、坂道では大事を取って敢えて歩くことにします。すでに走る時間よりも歩く時間のほうが長いですが、制限時間に何とか間に合いそうなペースを計算しながら、なるだけ慎重に歩を進めます。

途中、私のわがままで商店に立ち寄り、アイスバーを買い求めました。お店の方は奥におられて答えが無かったのですが、道の反対側で応援されていた近所の方が気付いて呼んで下さり、無事に購入。「どちらから来られたのですか?」「ここまで走り通されて、さぞ大変だったでしょう!」「レース中、うちの商店にお立ち寄りいただいて本当にありがとうございました!」と笑顔で丁寧に応対され、その温かさにまた感激です。

92.5km、最後のレストエイドでは、つみれ入りの有名な"海賊汁"が待っていました。

えちご・くびき野100kmマラソン

溜まった疲れのせいか旺盛な食欲はふたりとも無く、一杯の海賊汁を分け合えば十分です。しかし噂に違わず、美味しかった! 心と身体に、しみ入るようです。

えちご・くびき野100kmマラソン

このエイドは最後の関門でもあり、制限時間は18:00時に設定されています。私たちはここを、17時5分ぐらいに出発しました。もう、かなり歩いても大丈夫なはずです。無理せずに歩き、走ります。

エイド出口では、リフレクター付きのたすきを渡されました。もちろん要所要所には誘導赤色灯を持つスタッフが配置され、身の危険を感じるような場面は全く経験しませんでしたが、行き届いた安全対策の一端をここでも感じることができました。

最後の数キロはその大半を歩き、百間町に入ってフィニッシュ地点の歓声が近づいてきたあたりで、最後のランを始めます。

そこまでは冷静にペースを計算していたせいか、あるいは連れ合いの脚のコンディションばかり気にしていたせいか、自分が何を走っているのかさえ、すっかり忘れていました。ところが、沿道で応援に立つおねえさんから「完走、おめでとうございます!」と声が掛かった瞬間、100kmの完走を突然、実感したのでした。待ちわびたゴールはすぐそこのはず。唐突に、じわじわと感動がこみ上げてきます。

赤色灯のスタッフに誘導されて角を曲がると、もうそこはフィニッシュゲート目前、レッドカーペットの上でした。ふたりでグリコポーズを取り(笑)、ゆっくりと走りながらフィニッシュゲートをくぐりました。

ゲートの向こう、チップセンサーの先にはゴールしたランナーひとりひとりに中学生が待ち構えていて、「おめでとうございます!」と完走メダルを掛けてくれます。それと同時に、毛布を手渡してくれたり、計測チップを靴から外してくれたり、「お荷物を取ってきましょうか?」と尋ねてくれたり、もう至れり尽くせりです。あれれ?私はVIPだったのかなと、勘違い。(笑)

大きなテント下には、ランナーのためにテーブルと椅子が用意され、物売りの屋台が無い代わりにスポーツドリンク、麦茶、スープ、うどん、果物、チョコなどが振舞われ、テーブルの間をくまなく廻る中学生たちが、ウェイター、ウェイトレスさながらに、チョコや果物を配ったり荷物を席まで運んだりしています。どの子も自分の役割を果たすことに専念していて、大勢いるランナーたちのために親身に対応してくれています。彼らの姿は実に献身的で、感動的でした。もちろん大人のスタッフも、誰に何を尋ねても親切に的確な対応をしてくださる方ばかりで、そのサービスの質の高さには驚嘆するほかありません。

えちご・くびき野100kmマラソン

RUNNETの大会レポにどなたかが、「意味のわからないお金をかけるでもなく、タレントを呼ぶでもなく、運営とボランティアと、市民の皆様のおかげでこんな素晴らしい大会ができる」と書かれています。まさにそのとおりだと、私も思います。

ただでさえ時間と距離の長い大会ですから、掛かる手間も半端ではないでしょう。また、たとえ善意で協力するにしても、全員が同じ方向を向くのは普通は難しいものだと思います。ここまで来るには、いろいろな経緯や問題があったに違いありません。しかし、そんなことを微塵も感じさせない見事な大会運営で、さまざまな工夫が信じられないほどうまく機能しています。地元の皆さんに感謝しつつ、大会運営もあまり無理せずに楽しめる範囲でお願いします、と申し上げたい気持ちです。

スタッフの努力もさることながら、沿道の人たちがことごとく、しかもこれほど長い時間にわたって応援してくれるのは本当に凄いことです。誘導係のスタッフに止められて迷惑そうな表情を見せるドライバーは、ついぞ見かけませんでした。それどころか、スピードを落としてすれ違うクルマの中から「がんばってくださ~い!」と声援を受けることもしばしば。生活テンポが違うと言われればそれまでですが、信号の無い横断歩道で待つ人の目の前をどのクルマもスピードを落とすことなく通り過ぎるのが当たり前な東京では、ちょっと考えにくい光景じゃないでしょうか。

この記事を書きながら、100kmの道を自分が誰に走らせてもらったのか、改めて知った気がします。すっかりダメージを受けた連れ合いの膝は気になるものの、それはまた別の問題。私は怖気づいてパスしなくて良かったと思います。ひとりのランナーとして望外の、素晴らしい体験でした。



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