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苦しくも愉しい野辺山の道

完走が奇跡に思えた日

野辺山ウルトラマラソン2014

レースの火蓋を切って落とす、輝かしい朝日!

野辺山ウルトラ100kmに初参戦しました。

野辺山ウルトラマラソン2014コース

最初にコースをおさらいしておきたいと思います。

八ヶ岳山麓の南牧村(野辺山)をスタートして林道を辿り、松原湖へ降りたあと千曲川を渡って、小海町、北相木村、南相木村へ、馬越峠を越えて川上村に下り、野辺山へと戻るサーキットです。

エリアが広いのでGoogle Earthでも高度差が分かりにくいかもしれませんが、最高地点は1,908m、最低地点は880mなので、その差は1,000mを超えます。えちご・くびき野と比べると、倍以上の数字です。おまけに、あちらは全線舗装されたロードなのに対して、こちらは前半の峠がまるごと未舗装の林道です。

野辺山ウルトラマラソン2014コース

累積獲得標高(上りを全部足した数字)は、公式の数字が無いのですが、ガーミンの計測で2,219mでした。これはかなり誤差があると思いますが、ルートラボにインポートした結果が2,050mなので、おそらく2,000mぐらいはあるはず。今はこれを上回る飛騨高山や白山白川郷ウルトラが開設され "日本一過酷" の冠が取れたとはいうものの、だから野辺山が楽になったわけでもありません。

富士登山競走や乗鞍天空マラソンには及ばないものの、コース全体の標高が高いこともここの特徴でしょう。心肺機能の高さが試されるコースともいえそうです。(血清鉄が低いと診断されている私は高所が苦手です。)

動くログはこちらから。時間が長過ぎて保存ができなかったので、2分割しました。

野辺山ウルトラマラソン2014(前半)
http://yahoo.jp/R7iRFl
野辺山ウルトラマラソン2014(後半)
http://yahoo.jp/j0lEf7

別に他人のログ見て面白いことも無いとは思いますけど、高低図の上でマウスカーソルを動かすと地図上の位置が分かるので、このコースを初めて走る方には多少の参考になるかもしれません。

前日昼過ぎに受付会場に入りました。選手受付のテントでナンバーカードと参加記念品を貰い、イベント会場の体育館へ。ステージでは常に何かやっている感じで、賑わっています。物販ブースもいくかあり、気になるブースを見て廻ったり、連れ合いの顔なじみなラン友たちと談笑したり。

野辺山ウルトラマラソン2014

しかし観光協会に当てがわれた宿が隣駅の清里と遠かったので、早めに切り上げてチェックイン。食事の都合で前夜祭をパスしたのを、連れ合いはとても残念がっていました。とはいうものの、逆算すると翌朝2:30には起きなければならないし、早目の食事と就寝が正解のはず。かくいう私はどうしても寝付けず、結局ほぼ完徹状態で起床時間を迎えてしまいました。

3:00に朝食を摂り、3:30に会場入りします。外はさすがに寒く(氷点下だったらしい)、今頃になって襲ってきた睡魔で頭がぼーっとしている私は、スタート間際まで体育館内でうとうと過ごすことに。一方、気合が入りまくりの連れは、スタート前のトイレを逃したくないからと早々に出てゆきました。

建物の外に設置された仮設トイレの数は十分ですが、建物から少し離れた場所にあり、さすがに寒そう。しかし建物内のトイレは開放されておらず、外だけのようです。いつも最初だけは一緒だったりするのですが、今回はスタートからバラバラになりました。

朝5時といっても、日が長い季節。スタートの数分前に、まるで測ったかのように東の空から日が昇ってきました。

野辺山ウルトラマラソン2014

天候は快晴。朝の間とは打って変わって、日中は暑くなりそうです。日頃の不摂生が祟ったのか、胃のあたりがシクシク痛みますが、この際、構っていられません。スタート前のトイレも結局パスしました。昨晩たらふく食べているので、どこかで必ず行く羽目になります。

このあとサプライズゲストの安藤美姫の紹介が入り、短い挨拶を挟んですぐにスタートしました。間近からゲストを撮影しようとするランナーたちが多く、スタートゲート付近が渋滞気味です。「写真はご遠慮ください!」って今頃言ったって、もう遅い(笑)。

最初の数キロは、宇宙電波観測所をぐるっと廻る平坦な道。しばらく込み合いますが、周りのペースに逆らわずに、なるだけ同じペースで進みます。少し速い気がしますが、このペースはきっと舗装路の間の数キロだけでしょう。

途中、ちょっと複雑な五差路になった踏み切りを二度通ります。

野辺山ウルトラマラソン2014

踏み切りを超えて左に折れ、しばらく線路と平行して走っていると、小海線の上り列車が追い越して行きました。西の空には、月もくっきりと見えます。

野辺山ウルトラマラソン2014

完走するには、先ほどの踏切を最後にもう一度渡らなければなりません。列車が来れば止まらざるを得ませんから、ちょっと気になる存在です。

10km手前あたりから、いよいよ林道の砂利道に突入します。林道といっても、最初の数キロは斜度も緩やかで道幅もそこそこあり、ただ舗装されていないだけの普通の道といった感じでした。私は敢えてトレラン用シューズを選ばず、ロード用でしかも軽めのCSで来ましたが、問題ありません。

nobeyama_2014_006.jpg

しばらく進むと、少しずつ上り坂がきつくなり、本格的な山道になってきます。相変わらず胃のあたりが痛くて、気になります。

行く手は横岳でしょうか。雄大な景色の中を、どんどん登って行きます。身体がすっかり温まっているうえに、強い日差しで気温も上がってきました。アームカバーを外します。

nobeyama_2014_007.jpg

このあたりまで来ると、さすがに道が荒れ、数センチ大の石がごろごろと混じった悪路になってきました。轍は石ころが比較的少なめですが、石を完全に避けるのは無理です。轍の上と下の落差も結構大きく、どちらかに決めて走らないと疲れます。こんな道が20kmぐらい続きます。それでも私はロードシューズで十分走れると感じましたが、トレランシューズのほうが良いという人がいても不思議はない路面状況です。これがもし雨なら、石まじりの深いダートになります。その場合はロードシューズじゃダメでしょう。

10mおきぐらいに、土流れ止めと思われるゴム製の立板が道を塞ぐように現れるのにも要注意。10~15センチぐらいの高さがあるので、うまく跨ぐように走らなければなりません。脚を引っ掛けて転倒する恐れもあり、下り道ではとくに危険です。

私にとっていちばんのストレスは、前後のランナーとの接触を回避することでした。速いランナーにはあまり関係ない話かもしれませんが、私のペースでは前後のランナーとの間隔があまり広がっておらず、ダンゴのような小集団がすぐにできてしまいます。道の狭さと足元の悪さで、ダンゴの中で他のランナーを追い抜いたり自分がペースを落として追い抜いてもらうのは、かなり気を遣うのです。

さらに胃が痛くなってきました。きつい上りは、無理せずに歩きを入れることにします。

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天候に恵まれたおかげか、泥だらけになったり滑りそうな箇所はありませんでした。道が盛大に濡れていたのは、たぶんここだけ。おいしい水を頂き、少しだけ生き返ります。

つづら折りの上り坂は背の高い針葉樹の林をくぐり抜けて続きますが、ときどき視界の開ける場所が現れます。素晴らしい眺望に、脚を止めてしまいました。富士山が見事です。

nobeyama_2014_008.jpg

気になっていた「コース最高地点」の看板をなぜか見落としてしまったのですが(間抜け!>^^;)、あとで皆さんのブログなどを拝見すると、どうやらこの富士山を撮ったポイントが最高地点だったようです。

この先、道はどんどん下って行きます。ずいぶんと長い下りが続くので峠はもう終わりかと思ったら、また上りが出てきて、がっかりするという展開に。早くも精神力を試されている気分になってきました。

何度か上り下りを繰り返し、いったん舗装路になった後でまた未舗装路に戻ります。もう一度舗装路になってしばらく行くと、最初の大きなエイド「稲子の湯」が現れました。

nobeyama_2014_010.jpg

皆さん、名物のおしるこを美味しそうに食べてます。胃痛が引かないので少し迷いましたが、せっかくなので半分だけ頂きました。内臓トラブル無しで美味しく食べられる人が羨ましい。ここまで我慢してきたので、さらに15分ほど列に並んでトイレ休憩です。

稲子の湯を出ると、またちょっと上りが入りますが、しばらく進むと車道と合流し、あとは見通しの良い道を松原湖の下まで一気に下ります。

途中の40kmエイド、42km八峰の湯レストポイント、松原湖前後の小エイドも全てパスし、ほとんど脚を止めずに5km/分前後で駆け下りました。カメラを持つと危ないので、このあたりの写真はありません。

ここからは千曲川を超え、小海に向かって一般道をひたすら進みます。下り道で脚をだいぶ使ってしまったので、平坦なところは走り、でも上り道は走る気が萎え、他のランナーに抜かれながら歩きます。

今回、大きな不安のタネがひとつだけありました。それは左の足底。2年前えちご・くびき野100kmを走ったときに最初の峠でやられ、レース中ずっと痛みを抱えたままでした。その痛みはレース後に治るどころか半年以上もじわじわと悪化し続け、ろくに練習を続けることもできなかったのです。そんな故障を、また抱えたくない。

しかし上りでかなり歩いたとはいえ、野辺山の最初の峠を越えた今も、いつもの微かな違和感があるだけで気になるような痛みは感じません。下りでつい忘れたまま飛ばしてしまったので、今頃ふと気がついて驚きました。下り道をうまい具合にいなせたのでしょうか。嬉しい誤算です。この先は、なるだけ大事を取ることにします。

この区間はだいたい6分半/kmぐらいのペースで進み、11時前には50kmエイドにたどり着きました。「手打ちそば」の幟の前のランナーの列に、しっかり並びます。

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待つ間、一緒に並んだ仮装ランナーの方と話をしたり、エイドのおじちゃん、おばちゃんたちの手元に見とれたりしながら、のんびりと過ごしました。そばを打つボランティアスタッフの方たちは、衣装も手捌きも本格的! 素晴らしい笑顔に、疲れも吹き飛びます。

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そばは、じつに腰が強くて香りが高く、極上美味でありました。まだ少し胃がおかしいですが、塩分摂取を兼ねて、つゆまで残さずいただきました。

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50kmエイドを出ると、すぐに右に折れて上り坂になり、ここからは59kmレストポイントまでは、だらだらと上りが続きます。

相変わらず平坦なところだけ走り、上りになったら歩きに切り替えます。ただ、上りが増えたぶん、時間が余計に掛かるようになってきました。貯金を節約しようと、歩くピッチを速めてペースを底上げします。熱中症になりそうなので、腰に下げたフラスクから水を(ぬるま湯みたいですが)歩きながら摂取します。ガーミンのログを見ると、この区間は6分/kmから8分/kmといったペースでした。

「北相木村」の標識を通過しました。50kmから59kmの、だいたい半分ぐらいです。

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このあと、すぐに三叉路が現れます。北相木川に南相木川が合流する「川又」交差点。そこから59kmレストポイントまでは、このコース唯一のランナーすれ違い区間です。

道の反対側を下ってくるランナーたちのしっかりとした足取りに見惚れますが、こちらは早くもスタミナ切れ。脚も重くてなかなか言うことを聞いてくれません。50m走っては100m歩くような情けない状況が続いています。周りのランナーにも、じわじわと抜かれてゆきます。

それにしても、別々にスタートした連れ合いに出くわしません。もし先行しているならここですれ違うだろうと踏んでいましたが、一向に姿が見えず。私が川又に到着するよりも前に反対方向を通過したとも思えず。ならば今頃59kmポイントで休んでいるのか、それとも後ろから追ってきているのだろうか。・・・さすがに気になってきました。

12時前、北相木村役場の59kmレストポイントにたどり着きました。

野辺山ウルトラマラソン2014

野辺山ウルトラでは、42km、59km、87kmのレストポイント3箇所の中から2箇所を選んで、着替えなどの荷物を置くことができます。私は42kmは最初から通過する予定だったので59kmと87kmの2箇所を選び、どちらにもウェアとサプリ類を預けてありました。

長時間のタイツ装着で腹部が締め付けられているのが胃痛の一因と考え、ここでタイツを脱ぐことにします。ついでにソックスとアンダーも着替えて、胃が落ち着くのを待ちながら手持ちのサプリを少し消費。預けてあったサプリを、代わりにポーチに詰めました。

失敗だったのは、アイシングスプレーを荷物に入れなかったこと。沖縄マラソンも、那覇マラソンも、えちご・くびき野ウルトラマラソンも、エイドにアイシングスプレーが豊富に用意されていました。それで、なんだか長距離レースではそれが普通であるかのように勘違いをしてしまい、エイドに置かれていないことを全く想定していなかったのが敗因でした。仕方なく、かぶり水で膝を冷やしますが、シューズを濡らさないように掛けるのは難しく、面倒でした。シューズは乾きにくいし、濡れたまま走るとマメなどのトラブルを呼び込むリスクが増えてしまいます。

着替えとサプリ摂取、アイシングを含めて、ここではたっぷり20分ほど休んでから出発しました。川又までの戻り道は下り基調なので、頑張って走りメインで行きます。

レストポイントを出て間もなく、反対側を登ってくる連れ合いから声が掛かりました。走りを見るかぎり元気な様子ですが、しきりに「脚がやられた!」と訴えています。心配していた故障の予兆が出てしまったようです。「次でやめる」というので「分かった」と頷いて先を急ぎます。残念だけれど、仕方ありません。最後まで走り通すのと引き換えにこれからの半年、一年を棒に振るのは、あまりに馬鹿げてます。ここは勇気を持ってリタイアすべきです。

彼女の悔しさも背負って最後まで絶対に走り抜こうと、心に誓います。

川又から71kmレストポイントまでは、再び上り基調になります。まだ峠ではないので、斜度はそれほどきつくないはず。なのに、もう今すぐ止めて、途中の滝をのんびりと眺めつつ、温泉でくつろぎたい気分。なぜか首と肩がバリバリだし、歩くだけで脚はそこかしこ痛いし、おまけに暑さで息切れ気味です。

小さな祠と立派なケヤキに、ふと立ち止まります。心が洗われるようです。

野辺山ウルトラマラソン2014

日差しがきつく、体力を消耗します。木陰を目指して走り、日陰は歩くという繰り返しになってきました。

野辺山ウルトラマラソン2014

暑い!暑い!暑い! 周りのランナーたちも、前の人につられるかのように、日陰を求めて右に寄ったり左に寄ったり。私よりは走っていると思いますけど、多くのランナーが走ったり歩いたりを繰り返しています。

14時11分過ぎ、滝見の湯レストポイントに到着しました。

ここでゴールを迎える71km部門のランナーが、正直、ちょっぴり羨ましい。完走のご褒美メダルのうえに、温泉とは!

野辺山ウルトラマラソン2014

ここまでそんなに食べてませんが、どうにもこうにも食欲が無く、そばは断念。手持ちのサプリをひとつ開封して流し込み、スポーツドリンクを少し摂り、フラスクを水で満たし、かぶり水で首筋と膝を冷やし、そして、なけなしの勇気を振り絞って出発します。

ついに、地獄の入り口(?)にたどり着きました。ここまでの上り道で十分きついと感じたのに、野辺山で一番の難所だという馬越峠はいったい、どれほどきついのやら。

野辺山ウルトラマラソン2014

馬越峠は、林に囲まれた涼しげな、そして静かな道でした。クルマが入れる普通の道のはずですが、センターラインが無くても困らない程度の交通量しか無いようです。

しかし斜度はそこそこあり、もうとてもじゃないが、走る気が起きません。事前に立てたここでの目標、10分/kmで峠の上り坂を乗り切ろうと必死にもがきますが、両膝は鉄アレイのように重く、まるで強制連続スクワットをやってるような感じです。でも、この痛みに負けて一度でも立ち止まったなら、きっとそこでレースが終わってしまう。何がなんでも、止めるわけにはいきません。

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私を含めてほとんどのランナーは歩いていますが、ゆっくりと走りながら抜いてゆく凄いランナーが、たまにいました。ペースはどうあれ、ここを走ろうとするだけで尊敬してしまいます。まして、そのまま後ろ姿が見えなくなるまで走り続けるとは、どういう体力、気力の持ち主なのか。もはや超人としか思えません。

頑張って歩を進めますが、そのうち胃の痛みに代わって今度は急激に気持ちが悪くなってきました。10分/kmを無理に維持しようとすると、強烈な吐き気に見舞われます。仕方なく、何とか吐かずにすむぐらいのペースまで落としてゆき、最終的には13分/km前後にまで落ちてしまいました。もう限界です。

登れども登れども、頂上はなかなか見えてきません。途中でエイドが現れますが、ここはまだ上りの半分とちょっとぐらいだと聞いて、がっくり。募る嘔吐感に負けて一休みしますが、あんまり休むと間に合わなくなるのは目に見えてます。回復具合もそこそこに、エイドを後にします。

途中、何台かクルマを停めたママたちからの応援を受け、気分だけでペースはぜんぜん上がりませんが、少しだけ元気を取り戻しました。なおも登り続け、さらに2kmほど歩いたでしょうか、ついに!頂上の79kmエイドが見えてきました!!

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食べるのは無理です。でも、もう残りはハーフの距離。しかも、しばらくの間は、脚さえ持てばラクにペースを稼げる下り坂。下りきった少し先には87km地点、川上村のレストポイントもあります。ここで食べなくても、困りません。

川上村のレタス畑でしょうか、雪のように白く輝くビニールに一面覆われた里の景色を眺めつつ、ひたすら吐き気が和らぐのを待つことにしました。

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そんな折も折。連れのラン友に声を掛けられました。

「おおお、こんなところで出会うとは! 元気そうだね!」
「この時間にここまで来てれば大丈夫、あとは歩いても完走できるよ。」
「そっかぁ、もうひと頑張りだね。でも、胃が気持ち悪くってペース保てなかった。」
「胃薬持ってるよ、あげようか?」
「いや、いま少し休んで楽になったから、なんとかいけると思う。」

短い会話を交わした後、元気に坂を下りてゆく彼女を見送ります。力強くも軽快な、じつに美しい走り! このまま引いて貰えればと付いてゆこうとしますが、またすぐに吐き気がこみ上げてきます。たまらず減速し、しばらくは歩くことにしました。

脚力をほとんど使わずに歩くうち、胃も少しずつ楽になった気がしてきました。懸念していた足底も痛みが出そうな気配がありません。えいや!っと走り始め、あとは勢いに任せるように走りました。少し先で、先行していた彼女に並び、「胃は大丈夫?」「ダメみたい^^;」とか何とか応えつつ、「また下で!」と交わしてゆきます。

下り坂がついに終わるあたりで、川を渡して掛けられた見事な鯉のぼりたち。やった! 馬越峠をついに越しました!

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ここからは、やや狭くまっすぐな一本道を、千曲川沿いに進みます。

わずかながら下りなので苦しくはないのだけれど、川上村原公民館に設けられた87kmレストポイントまで、たいした距離でもないはずの道が、先が見通せるだけにやたらと長く感じられます。

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ほどなく追いついてきたラン友女史としばし並走し(相変わらず良い走り!)、しかし峠の下りでスタミナを使い果たした私は、パワーみなぎる彼女に先に行ってもらいました。

ようやく、87kmエイドに到着です。

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ここで最後だからと、うどんに手を出して大失敗。三口と食べぬうちに、またもや強い嘔吐感に見舞われました。ここで再会したラン友の彼女は、救いの神、いや女神様でした。手持ちの胃薬を快く頒けてもらい、気持ちもぐっと楽になりました。これで何とか希望を繋げるかもしれない。「先に行くね!」と軽やかに飛び出してゆく女史を見送ったあと、再び歩き始めました。

峠で聞いた「歩いても完走できる」の言葉を頼りに、ときどき走りを交えつつもキホン早歩きで先を急ぎます。再びペースを上げて走り始めたランナーたちに、次々と抜かれました。でも私はペースを上げて走れません。首も肩も背中も限界で、フォームを作れなくなっています。両脚はとっくに限界を超え、動かし続けるのは根性入れないと無理。だけど下手に根性入れ過ぎると、こんどは致命的に攣ってしまいそうな気配が濃厚です。おまけに胃袋が、いつまた機嫌を損ねるか分からない。

終盤とはいえ、油断するには早すぎる。まだたっぷり10kmは残っています。どうやって乗り切るか。普段ならわけもない10kmだけれど、身体がこの状態では・・・。

90km計測ポイントの手前から、道は再び緩やかな上り坂になりました。手元のガーミンを使い、精一杯の早歩きで1kmのラップを取ってみました。9分37秒。時刻は17時25分20秒。残された時間は・・・えーっと。ざっと1時間半、90分か。このペースで歩いてもぎりぎり何とか間に合うと、霞む頭ではじきました。

実のところ、苦しい歩行をあと1時間半続けるよりも、この先の数キロを走り通して少しでも早く楽になりたいという誘惑さえ、ありました。でも客観的に考えて、鉛のような脚で走って万が一にも何かしらのトラブルに見舞われたなら、リカバリーは限りなく難しいでしょう。ここまで来たのに、ゴールを前にして終わるかもしれない。それだけは絶対に避けなければ! 歩いても間に合う場面であえて無理してリスクを取る余裕など、もう本当に無いのです。

暮れなずむまちの光と影のなか、残る力を振り絞る健気なランナーたちに次々と交わされてゆきます。妙なもので、歩く私につられるのか、追い抜いたとたんに歩き始めるランナーが何人かいました。でもそんな人でも、ものの1分もすると、また走り始めます。逆につられて走りだそうとする自分を抑え、だが決して歩を緩めることなく、前へ、前へ。

黙々と歩きながら、計算が間違ってるんじゃないだろうかと、ときどき不安に駆られ、さっきの計算を繰り返します。でも間違うときは、何度計算しても同じように間違えるんだろうな、とも思う。みんな、何であんなに先を急ぐのだろう? もう時間が無いんだ。仮定したとおりに、9分半で歩けているのだろうか? 何度もペースを測ろうとしますが、そのたび1km通過を見落として測れず、気ばかりが焦ります。時計はGPSだから秒単位で正しいはず。でも肝心のいま、本当に合ってるのだろうか?・・・さっきから堂々巡りだと分かっているのに、同じ考えの繰り返しから抜けられません。

脚の痛みや呼吸の苦しさより、頭のなかを巡る不安のほうが苦しくなってきました。

93kmか、それとも94kmぐらいだったでしょうか。路傍にクルマを停めた私設エイドの方の目の前を一瞬行き過ぎ、ふと気になって1メートルほど取って返しました。「どうぞ食べていってください。両手でいっちゃって。」「いただきます!」・・・うっわぁー、おいしい! 「これ何ですか?」「自家製のゆずゼリーです。」「ありがとうございました!」 ほんの10秒のできごとでした。

でも、なんということでしょう。今にもくじけそうだった心のなかの重苦しさが、何故かすっかり晴れていました。瞬時に取り込まれた糖分のおかげか、心をほぐす会話の力なのか、いったい何が起きたのか分からない。ただ、なんだかとても心が軽く、不思議な至福に満たされた気分なのです。

計算は絶対に合ってるという妙な確信が、そして最後までペースを緩めずに必ず歩き通せるという自信が、いまようやく戻ってきた。そのことに気付いた瞬間、突然、涙が溢れ出てきました。・・・絶対にいける!

半べそかきながら歩くランナー。周りから見たら、ちょっと変なヤツです。それに気付いて急に可笑しくなり、へ、へ、へ、と独り笑い。さらに変なヤツになってしまいました。自分で言うのもなんだけど、ちょっと頭がおかしいです。

フィニッシュゲートの明かりが右手に見え、「○○さん、お帰りなさ~い!」というアナウンスが間近に聞こえてきます。ここでコースは無常にもゲートに背を向けて左折してゆきます。でも、はなから分かっていることなので、気にしません。コーナーに立つ誘導係の人に誰かが、「あと何キロですか?」と尋ねています。「あと4.3km。」 手元の時計を、たいした意味も無くチラ見しますが、計算はしません。だって、もうその必要は無いし、それに小数点同士の掛け算なんて無理です。(^^;

まっ平らな最後の迂回コースを無事に全部食べ終わり、とうとう踏み切りまで戻ってきました。フィニッシュ地点は見えないけれど、もう残すところ数百メートルのはず。・・・と、誘導員の方が、こちらを見て何か、指示をしようとしているではないですか。・・・まさか! 停められる? 走るな、自分! 来るな、列車! 来るな!来るな!来るな!・・・「はぃ、どうぞ!」 よかった! 停めるための指示じゃなかったんだ! コースが続く方向へと手招きされた瞬間、どっと安堵が広がりました。

時計は18時55分? いやいや56分を廻っています。予定よりちょっとだけ遅かった気がするけれど、でももう不安はありません。たくさんの人たちが「お帰りなさい!」「おめでとう!」と祝福してくれる中を、ゆっくりと、まっすぐに進んで行きます。我慢に我慢を重ねた早歩きは、自然に走りへと変わりました。

最後の交差点に差し掛かる手前で、ブルーの計測シートを踏み越えます。その直後、フィニッシュゲートのあたりから「macnutsさん、お帰りなさ~い!」と聞こえてきました。今度こそ、自分の名前が呼ばれています。あれほどゴールを確信したのに、何かの夢を見ているような、信じられない気持ちです。交差点の角を曲がり、ゲート前を駆け上がってゆくと、コースに飛び込んでくる彼女の姿が目に入りました。「間に合ったね!」

頭のなかの片隅で「計算は合ってた!」とアホみたいに冷静に考えながら、もう片隅では湧き上がって収まらぬ興奮で頭が真っ白になり・・・何がなんだか分からない状態で、ゲートをくぐったのでした。

野辺山ウルトラマラソン2014




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孤独ではない、100kmの道

えちご・くびき野100kmマラソン

「えちご・くびき野」を走る幸せ

フィニッシュ後に大会本部でスタッフにお礼の言葉を述べたとき、「よろしかったら、どうぞ」と渡された大判の大会ポスター。普段なら荷物を増やしたくなくて断るはずなのに、それまでにさまざまな方から頂いた心遣いがよみがえり、また嬉しくなって、つい受け取ってしまいました。

ポスターに書かれた「孤独ではない」のコピー。この言葉の意味を、こんなにも身をもって感じられることが、他にどれほどあるでしょうか。

えちご・くびき野100kmマラソン

10月5日・金曜日、スタート会場のリージョンプラザ上越で、前日受付を済ませました。館内でこれから始まる前夜祭に少しだけ後ろ髪を引かれつつ、体調維持を優先して宿に戻ることにしました。帰りのシャトルバスがいないかと見渡したら、なにやらスタートゲート付近に人が集まっている様子。やがて、「ランナーの姿が見えてきました!」と、女性アナウンサーの声が。

・・・ん? 前日なのに、ランナー?

集まった人たちの視線の先を見やると、聖火ランナーのようにトーチを掲げたランナーがふたり駆け込んできます。とくに事前の案内も無く知らなかったのですが、それはスタートゲート脇のかがり火を点火するイベントでした。運営に力が入っている様子が伝わってきて、明日への期待が高まります。

会場へのアクセスは、大会前日/当日とも、直江津駅北口、サンプラザホテル、ホテルα-1、ホテル元気人と100kmスタート会場のリージョンプラザ上越を結ぶ路線、高田駅からリージョンプラザ上越を結ぶ路線、それに大会当日はリージョンプラザ上越と50kmスタート会場うみてらす名立を結ぶ路線にシャトルバスが運行され、私が利用した時間帯(前日午後と夕方、当日朝とフィニッシュ後)の直江津駅~リージョンプラザ上越は、いずれも十分な席数があって、とてもスムーズに移動することができました。

えちご・くびき野100kmマラソンのコースは、リージョンプラザ上越を出てくびき野を南下し、山沿いに東に進み、北上して海沿いを下り、最後はくびき野の "ヘソ" のような百間町へと向かう、上越市一周のワンウェイです。

えちご・くびき野100kmマラソン

中盤はずっと山の中。途中、大きな峠が4つ、その後もさらに小さな峠がひとつ待ち受けています。連れ合いに釣られた勢いでエントリしてしまった大会ですが、私にとっては初ウルトラ。もしも、こんな山道を含むと事前に気付いていたら、怖気づいてエントリしなかったかもしれません。(^^;

前日配布のガイドブックによれば、累積標高+1573m、-1567m だそうです。この数字は乗鞍天空マラソンを超えています。

えちご・くびき野100kmマラソン

実走したログをルート・ラボに取り込んだら、トラックポイントが多すぎると言われて保存できませんでした。走行ペースが遅いせいで、ログが膨らんだのでしょう。(^^; 仕方ないので、前半と後半に2分割したログを公開しました。動くログはこちらをどうぞ。

えちご・くびき野100kmマラソン 2012(前半)
http://yahoo.jp/KfECls
えちご・くびき野100kmマラソン 2012(後半)
http://yahoo.jp/JIT8vn

細かなコース取りは前回大会と異なる部分があるようです。道路の付け替えや安全面などの理由で毎回見直しているのだと思います。

4つの峠のちょうど真ん中51km付近に第1トランジットが、78.8kmに第2トランジットがあり、あらかじめ荷物を預け、着替えも出来ます。今回は天候に恵まれたので着替えの必要性を感じませんでしたが、いざとなればウェアもシューズも取り替えられるという安心感があり、ありがたい配慮です。

エイドは、給水、レストエイド、トランジットなど合わせて37箇所もあり、平均するとなんと3km以内で次のエイドが現れる計算になります。実際に走ってみても、エイドを1箇所ぐらい見逃しても心配ないと思えるほどエイドが充実していました。

大会当日、朝5時過ぎの100kmの部スタートゲートです。風も無く適度に涼しい穏やかな天候。号砲が鳴った直後に、なんと連れ合いのコンタクトレンズがずれてしまい、じっくりと直してからほぼ最後尾でスタートを切りました。それでもロスは1分30秒ぐらい。距離が距離ですし、先を急ぐ旅でもありません。

えちご・くびき野100kmマラソン

スタート直後、沿道から凄い声援の嵐を浴びました。まだ暗いのに、応援がこんなに多いとは思いもよりませんでした。大勢の「いってらっしゃーい!」の声に手を振りながら、まだ空けやらぬ街へ飛び出してゆきます。

途中までは集団がバラけず、ペースも上がりません。流れに身を任せ、キロ6分30秒ぐらい。ちょうどいい感じです。せめて峠越えの前まで、このペースを維持できれば・・・。

スタート前にはお腹が動いてくれず、5kmぐらいから徐々に動いて不安な状態になってきました。9.1km付近、最初の大きめのレストエイドに仮設トイレを見つけて入ることにします。

女性専用トイレがきっちり確保されているのは好感が持てるのですが、なんとそちらは空いているのに男子は数名が待ち状態。エイドを設営した場所の建物にもトイレがありましたが、同じ状態のようです。序盤の"大"は大人気(?)なのかもしれません。(笑)

まあ急ぐ必要はないと余裕で(?)並び、用を済ませて出てきたら・・・

えちご・くびき野100kmマラソン

あれほど混んでいたランナーたちの姿がほとんど見えず、びっくり。(笑) スタッフの方々の大きな拍手の中、最終ランナーがちょうどエイドへと向かってくるところでした。勝負は、まだまだ先! 一緒にがんばりましょう!

とはいうものの、さすがに焦ってペースを少し上げたら、1kmラップが5分50秒を切っていました。これだと後が持たないと判断してペースを落としますが、そのうちなんとか集団の最後尾を捉えます。

見渡すかぎりの青々とした水田を突っ切り、集落と集落との間を縫うように三和区から清里区、板倉区へと進んでゆきます。途中で複雑に曲がる交差点がいくつもありますが、誘導が確実でスムーズなので迷いようもありません。

えちご・くびき野100kmマラソン

ちょっとした集落があれば「ようこそ△△の里、○○区へ!」と横断幕が掲げられたり、「それなりに走れ!○○区」という看板が現れたり、玄関先では家族総出で手を振りながら「がんばって!」と声援してくれたり、笑みがこぼれる場面の連続。そしてこんな歓迎が、この先ずっと続くのです。

給水エイドには水、麦茶、スポーツドリンク、コーラ、レストエイドにはさらにバナナ、オレンジ、レモン、塩、おにぎり、梅干、団子、チョコなどが豊富に用意され、これなら何も持たずに走ったって不安は無いでしょう。エイドによっては区特産の餅や蕎麦、きのこ汁などの汁物各種も用意され、ランナーへの売り込み合戦さえ繰り広げられます。(笑)

えちご・くびき野100kmマラソン

蕎麦は何箇所かで供されていました。私はわりと最初のほうで頂きましたが、なんでこんなに美味しいんですか! 思わず、おかわりを頂いてしまいました。当たり前かもしれないけれど、いつも食べている東京の駅そばとは、到底比べ物にもなりません。同じ名前だが、あれは全く別の食い物に違いない。

走路上の誘導に立つボランティアの方々、それに沿道の人たちが、皆さん気持ちよく笑顔で声を掛けてくれて、どんどん気分が盛り上がってきました。こちらも「おはようございます!」と笑顔で返します。

そうこうするうち気が付けば30kmを通過し、牧区に入って道は次第に上り坂になってゆきます。街中40.5kmのレストエイドまでは何とか走りを維持したものの、山中へ分け入ってからの激坂は、予定通り(割り切って)歩きで乗り切ることにします。

えちご・くびき野100kmマラソン

斜度が10%とか、もしかしたら15%を超える区間も多いのではないでしょうか。周りの多くのランナーも、歩き混じりのようです。少しでも速く歩こうと頑張りますが、なかなか手強い急坂。そこを全く歩かずに走って登り切る凄い視覚障がいランナーに、あっさり抜かれてしまいました。そのランナーと平然と話などしながら駆け上がる伴走ランナーも、また凄いですね。

同じ視覚障がい選手を下りで追い抜き、上りでまた抜き返されるパターンを、その後何度も繰り返します。(笑)

えちご・くびき野100kmマラソン

やっとたどり着いた、第1トランジットのB&G海洋センター。ここまでで、およそ半分です。当然、辛いことは辛いのですが、考えてみれば私にとってすでに未知の領域に突入しています。ここまで無事にたどり着いただけでもラッキー。それでも足が売り切れた感じはしないので、飛ばし過ぎずに自重すればまだいけるかもしれません。

ただ長い下りをそれなりに飛ばしたせいか、肩がバリバリ、持病気味の腰にもかなり負担が来ていました。着地のたびに左足だけ足裏に痛みが走るので、アーチがヘタっている疑いも濃厚です。

えちご・くびき野100kmマラソン

長い待ち時間を承知で、思い切ってマッサージをお願いする決意をしました。救護テントの下で、3名の有資格者の方がボランティアで施術に当たっておられます。肩も少しほぐしていただき、左足裏にはテーピングをしてもらいました。マッサージはここだけでなく、大きなレストエイドの数箇所に設置されていました。

十分に休んだら、出発します。すぐに、また大きな峠がやってきます。

えちご・くびき野100kmマラソン

棚田をいくつも通り過ぎ、遠方には美しい峰々を望みつつ・・・ぜぃぜぃ、はぁはぁしながら、峠を越えてゆきます。次のエイドが、待ち遠しい!

峠では、続けざまにひょうきんな案山子が現れたり、「がんばっても、どうせ明日は筋肉痛」と書かれた看板が現れたり。苦しみながら、笑いながら、自分でもわけわからなくなりつつ進みます。

安塚区、大島区と山道を辿り、ようやく4つ目の峠を越えると、そこは浦川原区。そのうち、ほくほく線の虫川大杉駅が出てくるはずです。川沿いに下り、トイレ休憩を挟みつつ(相変わらず男子トイレが混んでいます)足の重さと闘いながらも、ひたすら重力に頼りきって何とか脚を廻してゆきます。

ほくほく線の高架下に出ると、エイドに続いて中学生の大声援とハイタッチに元気をもらって復活しました。どうして自分がこんなに応援してもらえるのか不思議に思うほど、もの凄い応援ぶりです。

浦川原駅付近を通過してから最後の峠に掛かります。この峠は短いながら壁のようでした。溜まった疲れに追い討ちを掛けぬよう、ここも歩いてしのぎます。(後から地図を確認したら、実にたいしたことのない距離と高さで、がっかりしました。(笑) )

75kmあたりで道が平坦になると、そろそろ吉川区の第2トランジット。アナウンサーにゼッケン番号を読み上げられ、荷物を持って待ち受ける中学生に声を掛けてもらいつつ、トランジットに駆け込みました。あまり休むと再スタートが困難になりそうで、さくっと給水してアイシングスプレーもそこそこに、次の区間へと挑むことにしました。

そこから80km、85kmと海岸へ向かうまっすぐな道が続きます。風景がちょっと退屈ですが、次々に現れるエイドに助けられて気分を維持します。足取りは限りなく重いけれど、自分でも不思議なことに6分15秒前後のペースを刻めているようです。

途中、ちょうどエイドを出ようとしていた連れ合いの友人を見つけて声を掛け、しばらく進むと、先行していた連れ合いの後ろ姿をついに捕らえました。しかしどうも足取りがおかしく、調子を落としている感じの走りです。掴まえると案の定、以前に故障した膝裏が痛いとのこと。これはマズい。危険です。ここからは(もしそうなったら悔しいけれど)もしもの場合のリタイアも視野に入れ、サポートしながら伴走することにしました。

意識的にペースを落として、85.4km地点、柿崎区のレストエイドに設けられた第3関門をふたりで通過。海沿いの旧道に出ます。相変わらずの温かい声援を受けながら、旧く静かな佇まいの家々が並ぶ街を通り抜け、美しい日本海に出ました。凪いだ水面が、うっとりするほど綺麗です。

えちご・くびき野100kmマラソン

このあたりで日が暮れ始めますが、走路には工事用に使われる明るい照明灯が設置され、不安なく走れるように工夫されています。

再び街中に入ると歩道が狭く、並んで走るのは人迷惑な感じになってきました。また細かなアップダウンの繰り返しが意外と多く、ペースが安定しません。連れ合いの膝はまだ何とか持っているようですが上り下りでは負担が大きいので、坂道では大事を取って敢えて歩くことにします。すでに走る時間よりも歩く時間のほうが長いですが、制限時間に何とか間に合いそうなペースを計算しながら、なるだけ慎重に歩を進めます。

途中、私のわがままで商店に立ち寄り、アイスバーを買い求めました。お店の方は奥におられて答えが無かったのですが、道の反対側で応援されていた近所の方が気付いて呼んで下さり、無事に購入。「どちらから来られたのですか?」「ここまで走り通されて、さぞ大変だったでしょう!」「レース中、うちの商店にお立ち寄りいただいて本当にありがとうございました!」と笑顔で丁寧に応対され、その温かさにまた感激です。

92.5km、最後のレストエイドでは、つみれ入りの有名な"海賊汁"が待っていました。

えちご・くびき野100kmマラソン

溜まった疲れのせいか旺盛な食欲はふたりとも無く、一杯の海賊汁を分け合えば十分です。しかし噂に違わず、美味しかった! 心と身体に、しみ入るようです。

えちご・くびき野100kmマラソン

このエイドは最後の関門でもあり、制限時間は18:00時に設定されています。私たちはここを、17時5分ぐらいに出発しました。もう、かなり歩いても大丈夫なはずです。無理せずに歩き、走ります。

エイド出口では、リフレクター付きのたすきを渡されました。もちろん要所要所には誘導赤色灯を持つスタッフが配置され、身の危険を感じるような場面は全く経験しませんでしたが、行き届いた安全対策の一端をここでも感じることができました。

最後の数キロはその大半を歩き、百間町に入ってフィニッシュ地点の歓声が近づいてきたあたりで、最後のランを始めます。

そこまでは冷静にペースを計算していたせいか、あるいは連れ合いの脚のコンディションばかり気にしていたせいか、自分が何を走っているのかさえ、すっかり忘れていました。ところが、沿道で応援に立つおねえさんから「完走、おめでとうございます!」と声が掛かった瞬間、100kmの完走を突然、実感したのでした。待ちわびたゴールはすぐそこのはず。唐突に、じわじわと感動がこみ上げてきます。

赤色灯のスタッフに誘導されて角を曲がると、もうそこはフィニッシュゲート目前、レッドカーペットの上でした。ふたりでグリコポーズを取り(笑)、ゆっくりと走りながらフィニッシュゲートをくぐりました。

ゲートの向こう、チップセンサーの先にはゴールしたランナーひとりひとりに中学生が待ち構えていて、「おめでとうございます!」と完走メダルを掛けてくれます。それと同時に、毛布を手渡してくれたり、計測チップを靴から外してくれたり、「お荷物を取ってきましょうか?」と尋ねてくれたり、もう至れり尽くせりです。あれれ?私はVIPだったのかなと、勘違い。(笑)

大きなテント下には、ランナーのためにテーブルと椅子が用意され、物売りの屋台が無い代わりにスポーツドリンク、麦茶、スープ、うどん、果物、チョコなどが振舞われ、テーブルの間をくまなく廻る中学生たちが、ウェイター、ウェイトレスさながらに、チョコや果物を配ったり荷物を席まで運んだりしています。どの子も自分の役割を果たすことに専念していて、大勢いるランナーたちのために親身に対応してくれています。彼らの姿は実に献身的で、感動的でした。もちろん大人のスタッフも、誰に何を尋ねても親切に的確な対応をしてくださる方ばかりで、そのサービスの質の高さには驚嘆するほかありません。

えちご・くびき野100kmマラソン

RUNNETの大会レポにどなたかが、「意味のわからないお金をかけるでもなく、タレントを呼ぶでもなく、運営とボランティアと、市民の皆様のおかげでこんな素晴らしい大会ができる」と書かれています。まさにそのとおりだと、私も思います。

ただでさえ時間と距離の長い大会ですから、掛かる手間も半端ではないでしょう。また、たとえ善意で協力するにしても、全員が同じ方向を向くのは普通は難しいものだと思います。ここまで来るには、いろいろな経緯や問題があったに違いありません。しかし、そんなことを微塵も感じさせない見事な大会運営で、さまざまな工夫が信じられないほどうまく機能しています。地元の皆さんに感謝しつつ、大会運営もあまり無理せずに楽しめる範囲でお願いします、と申し上げたい気持ちです。

スタッフの努力もさることながら、沿道の人たちがことごとく、しかもこれほど長い時間にわたって応援してくれるのは本当に凄いことです。誘導係のスタッフに止められて迷惑そうな表情を見せるドライバーは、ついぞ見かけませんでした。それどころか、スピードを落としてすれ違うクルマの中から「がんばってくださ~い!」と声援を受けることもしばしば。生活テンポが違うと言われればそれまでですが、信号の無い横断歩道で待つ人の目の前をどのクルマもスピードを落とすことなく通り過ぎるのが当たり前な東京では、ちょっと考えにくい光景じゃないでしょうか。

この記事を書きながら、100kmの道を自分が誰に走らせてもらったのか、改めて知った気がします。すっかりダメージを受けた連れ合いの膝は気になるものの、それはまた別の問題。私は怖気づいてパスしなくて良かったと思います。ひとりのランナーとして望外の、素晴らしい体験でした。



川の道フットレース2012 応援ラン

川の道フットレース2012

アルさんの夢を日本海へ繋ぐ旅

荒川河口から信濃川河口までの520kmを走破するという、とんでもない(?)ウルトラマラソン「川の道フットレース」。ラン仲間が初参加するとのことで、連れ合いに誘われて応援ランに行ってきました。仲間の一人は仮装で有名らしい・・・この人です。

川の道フットレース2012

フルだろうとウルトラだろうと、距離にはまったくお構い無しに、ガッチャマン。(笑)

この大会では去年、参加者のひとりがレース中に飲酒居眠り運転のクルマにはねられて亡くなるという、あってはならない事故がおきてしまいました。実はその方、アルさんへの追悼をも兼ねた「応援ラン」なので、私たちはゼッケンの代わりに「STOP!飲酒運転」のメッセージカードを着けて走ります。

ガッチャマンのマントも、こんなふうです。「飲酒運転撲滅 ダメ!NO!」

川の道フットレース2012

70名以上のツワモノたちを集め、9時ちょうどにレースがスタートしました。

川の道フットレース2012

しばらくのあいだ、葛西臨海公園の新緑の中を進みます。

川の道フットレース2012

やがて、見晴らしの良い海沿いの道へ。

ここ東京湾を出発し、埼玉・長野県境の三国峠を越え、千曲川(信濃川)を下って日本海に面する新潟へとレースは続きます。

川の道フットレース2012

河口に近い清砂大橋で右岸へと渡り、折れ曲がった通路を経て荒川河川敷へ。橋の上から眺めると、ちょうど先頭集団が河川敷へ降りてゆくところです。

川の道フットレース2012

ここからしばらくは、走りやすい河川敷緊急道路、通称サイクリングロードを往きます。

川の道フットレース2012

途中何度も、道行く人たち、ジョガー、サイクリストの人たちまでもが、声援を送ってくれます。マイナーな大会なので、もちろんレースを知らない人たちが大半を占めるはず。だから声援などは全然期待していなかっただけに、ちょっと感激しました。(自分が参加しているわけではないのですが。^^; )

きわめつけは、心温かい私設エイドの数々。

川の道フットレース2012

川の道フットレース2012

川の道フットレース2012

「応援ですから。」と遠慮しても、「大丈夫です、どうぞ、飲んでいってください。」「・・・ではお言葉に甘えて、いただきます。」

今日は曇り空で、気温22度前後。ほぼ無風。このシーズンとしては穏やかで、どちらかといえば走りやすい天候だとは思います。でも実際に走ってみると、とても蒸し暑くて不快だし、そのくせちょっと油断するとすぐに脱水しそうです。エイドに用意された果物や冷たいドリンク類の、なんとありがたいことか。

いつになく脈拍が上がってヘタり気味な私は、早くも10km地点で歩いたり走ったりという、とても情け無い状況でした。もう少し、暑さに慣れないといけません。参加されている方の元気とエイドの笑顔に助けられて(どちらが応援してるんだか、これじゃ分かりません^^; )、なんとか予定通り新荒川大橋にたどりつき、ここでエスケープします。

川の道フットレース2012

参加者のレースは、まだ始まったばかり。力強い足取りで歩を進めてゆきます。これを書いている今頃、先頭はそろそろ熊谷を通過し、秩父を目指している頃でしょうか・・・。

がんばれ! そして、気をつけていってらっしゃーい!




レース参加者、関係者の皆様へ。

集合写真や記念モードの写真もあります。ご希望があれば差し上げたいと思いますので、お名前やご連絡先を、コメント欄でお知らせください。「秘密?」にチェックをしていただければ、コメントが公開されることはありません。





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