how's it goin' ?

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苦しくも愉しい野辺山の道

完走が奇跡に思えた日

野辺山ウルトラマラソン2014

レースの火蓋を切って落とす、輝かしい朝日!

野辺山ウルトラ100kmに初参戦しました。

野辺山ウルトラマラソン2014コース

最初にコースをおさらいしておきたいと思います。

八ヶ岳山麓の南牧村(野辺山)をスタートして林道を辿り、松原湖へ降りたあと千曲川を渡って、小海町、北相木村、南相木村へ、馬越峠を越えて川上村に下り、野辺山へと戻るサーキットです。

エリアが広いのでGoogle Earthでも高度差が分かりにくいかもしれませんが、最高地点は1,908m、最低地点は880mなので、その差は1,000mを超えます。えちご・くびき野と比べると、倍以上の数字です。おまけに、あちらは全線舗装されたロードなのに対して、こちらは前半の峠がまるごと未舗装の林道です。

野辺山ウルトラマラソン2014コース

累積獲得標高(上りを全部足した数字)は、公式の数字が無いのですが、ガーミンの計測で2,219mでした。これはかなり誤差があると思いますが、ルートラボにインポートした結果が2,050mなので、おそらく2,000mぐらいはあるはず。今はこれを上回る飛騨高山や白山白川郷ウルトラが開設され "日本一過酷" の冠が取れたとはいうものの、だから野辺山が楽になったわけでもありません。

富士登山競走や乗鞍天空マラソンには及ばないものの、コース全体の標高が高いこともここの特徴でしょう。心肺機能の高さが試されるコースともいえそうです。(血清鉄が低いと診断されている私は高所が苦手です。)

動くログはこちらから。時間が長過ぎて保存ができなかったので、2分割しました。

野辺山ウルトラマラソン2014(前半)
http://yahoo.jp/R7iRFl
野辺山ウルトラマラソン2014(後半)
http://yahoo.jp/j0lEf7

別に他人のログ見て面白いことも無いとは思いますけど、高低図の上でマウスカーソルを動かすと地図上の位置が分かるので、このコースを初めて走る方には多少の参考になるかもしれません。

前日昼過ぎに受付会場に入りました。選手受付のテントでナンバーカードと参加記念品を貰い、イベント会場の体育館へ。ステージでは常に何かやっている感じで、賑わっています。物販ブースもいくかあり、気になるブースを見て廻ったり、連れ合いの顔なじみなラン友たちと談笑したり。

野辺山ウルトラマラソン2014

しかし観光協会に当てがわれた宿が隣駅の清里と遠かったので、早めに切り上げてチェックイン。食事の都合で前夜祭をパスしたのを、連れ合いはとても残念がっていました。とはいうものの、逆算すると翌朝2:30には起きなければならないし、早目の食事と就寝が正解のはず。かくいう私はどうしても寝付けず、結局ほぼ完徹状態で起床時間を迎えてしまいました。

3:00に朝食を摂り、3:30に会場入りします。外はさすがに寒く(氷点下だったらしい)、今頃になって襲ってきた睡魔で頭がぼーっとしている私は、スタート間際まで体育館内でうとうと過ごすことに。一方、気合が入りまくりの連れは、スタート前のトイレを逃したくないからと早々に出てゆきました。

建物の外に設置された仮設トイレの数は十分ですが、建物から少し離れた場所にあり、さすがに寒そう。しかし建物内のトイレは開放されておらず、外だけのようです。いつも最初だけは一緒だったりするのですが、今回はスタートからバラバラになりました。

朝5時といっても、日が長い季節。スタートの数分前に、まるで測ったかのように東の空から日が昇ってきました。

野辺山ウルトラマラソン2014

天候は快晴。朝の間とは打って変わって、日中は暑くなりそうです。日頃の不摂生が祟ったのか、胃のあたりがシクシク痛みますが、この際、構っていられません。スタート前のトイレも結局パスしました。昨晩たらふく食べているので、どこかで必ず行く羽目になります。

このあとサプライズゲストの安藤美姫の紹介が入り、短い挨拶を挟んですぐにスタートしました。間近からゲストを撮影しようとするランナーたちが多く、スタートゲート付近が渋滞気味です。「写真はご遠慮ください!」って今頃言ったって、もう遅い(笑)。

最初の数キロは、宇宙電波観測所をぐるっと廻る平坦な道。しばらく込み合いますが、周りのペースに逆らわずに、なるだけ同じペースで進みます。少し速い気がしますが、このペースはきっと舗装路の間の数キロだけでしょう。

途中、ちょっと複雑な五差路になった踏み切りを二度通ります。

野辺山ウルトラマラソン2014

踏み切りを超えて左に折れ、しばらく線路と平行して走っていると、小海線の上り列車が追い越して行きました。西の空には、月もくっきりと見えます。

野辺山ウルトラマラソン2014

完走するには、先ほどの踏切を最後にもう一度渡らなければなりません。列車が来れば止まらざるを得ませんから、ちょっと気になる存在です。

10km手前あたりから、いよいよ林道の砂利道に突入します。林道といっても、最初の数キロは斜度も緩やかで道幅もそこそこあり、ただ舗装されていないだけの普通の道といった感じでした。私は敢えてトレラン用シューズを選ばず、ロード用でしかも軽めのCSで来ましたが、問題ありません。

nobeyama_2014_006.jpg

しばらく進むと、少しずつ上り坂がきつくなり、本格的な山道になってきます。相変わらず胃のあたりが痛くて、気になります。

行く手は横岳でしょうか。雄大な景色の中を、どんどん登って行きます。身体がすっかり温まっているうえに、強い日差しで気温も上がってきました。アームカバーを外します。

nobeyama_2014_007.jpg

このあたりまで来ると、さすがに道が荒れ、数センチ大の石がごろごろと混じった悪路になってきました。轍は石ころが比較的少なめですが、石を完全に避けるのは無理です。轍の上と下の落差も結構大きく、どちらかに決めて走らないと疲れます。こんな道が20kmぐらい続きます。それでも私はロードシューズで十分走れると感じましたが、トレランシューズのほうが良いという人がいても不思議はない路面状況です。これがもし雨なら、石まじりの深いダートになります。その場合はロードシューズじゃダメでしょう。

10mおきぐらいに、土流れ止めと思われるゴム製の立板が道を塞ぐように現れるのにも要注意。10~15センチぐらいの高さがあるので、うまく跨ぐように走らなければなりません。脚を引っ掛けて転倒する恐れもあり、下り道ではとくに危険です。

私にとっていちばんのストレスは、前後のランナーとの接触を回避することでした。速いランナーにはあまり関係ない話かもしれませんが、私のペースでは前後のランナーとの間隔があまり広がっておらず、ダンゴのような小集団がすぐにできてしまいます。道の狭さと足元の悪さで、ダンゴの中で他のランナーを追い抜いたり自分がペースを落として追い抜いてもらうのは、かなり気を遣うのです。

さらに胃が痛くなってきました。きつい上りは、無理せずに歩きを入れることにします。

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天候に恵まれたおかげか、泥だらけになったり滑りそうな箇所はありませんでした。道が盛大に濡れていたのは、たぶんここだけ。おいしい水を頂き、少しだけ生き返ります。

つづら折りの上り坂は背の高い針葉樹の林をくぐり抜けて続きますが、ときどき視界の開ける場所が現れます。素晴らしい眺望に、脚を止めてしまいました。富士山が見事です。

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気になっていた「コース最高地点」の看板をなぜか見落としてしまったのですが(間抜け!>^^;)、あとで皆さんのブログなどを拝見すると、どうやらこの富士山を撮ったポイントが最高地点だったようです。

この先、道はどんどん下って行きます。ずいぶんと長い下りが続くので峠はもう終わりかと思ったら、また上りが出てきて、がっかりするという展開に。早くも精神力を試されている気分になってきました。

何度か上り下りを繰り返し、いったん舗装路になった後でまた未舗装路に戻ります。もう一度舗装路になってしばらく行くと、最初の大きなエイド「稲子の湯」が現れました。

nobeyama_2014_010.jpg

皆さん、名物のおしるこを美味しそうに食べてます。胃痛が引かないので少し迷いましたが、せっかくなので半分だけ頂きました。内臓トラブル無しで美味しく食べられる人が羨ましい。ここまで我慢してきたので、さらに15分ほど列に並んでトイレ休憩です。

稲子の湯を出ると、またちょっと上りが入りますが、しばらく進むと車道と合流し、あとは見通しの良い道を松原湖の下まで一気に下ります。

途中の40kmエイド、42km八峰の湯レストポイント、松原湖前後の小エイドも全てパスし、ほとんど脚を止めずに5km/分前後で駆け下りました。カメラを持つと危ないので、このあたりの写真はありません。

ここからは千曲川を超え、小海に向かって一般道をひたすら進みます。下り道で脚をだいぶ使ってしまったので、平坦なところは走り、でも上り道は走る気が萎え、他のランナーに抜かれながら歩きます。

今回、大きな不安のタネがひとつだけありました。それは左の足底。2年前えちご・くびき野100kmを走ったときに最初の峠でやられ、レース中ずっと痛みを抱えたままでした。その痛みはレース後に治るどころか半年以上もじわじわと悪化し続け、ろくに練習を続けることもできなかったのです。そんな故障を、また抱えたくない。

しかし上りでかなり歩いたとはいえ、野辺山の最初の峠を越えた今も、いつもの微かな違和感があるだけで気になるような痛みは感じません。下りでつい忘れたまま飛ばしてしまったので、今頃ふと気がついて驚きました。下り道をうまい具合にいなせたのでしょうか。嬉しい誤算です。この先は、なるだけ大事を取ることにします。

この区間はだいたい6分半/kmぐらいのペースで進み、11時前には50kmエイドにたどり着きました。「手打ちそば」の幟の前のランナーの列に、しっかり並びます。

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待つ間、一緒に並んだ仮装ランナーの方と話をしたり、エイドのおじちゃん、おばちゃんたちの手元に見とれたりしながら、のんびりと過ごしました。そばを打つボランティアスタッフの方たちは、衣装も手捌きも本格的! 素晴らしい笑顔に、疲れも吹き飛びます。

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そばは、じつに腰が強くて香りが高く、極上美味でありました。まだ少し胃がおかしいですが、塩分摂取を兼ねて、つゆまで残さずいただきました。

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50kmエイドを出ると、すぐに右に折れて上り坂になり、ここからは59kmレストポイントまでは、だらだらと上りが続きます。

相変わらず平坦なところだけ走り、上りになったら歩きに切り替えます。ただ、上りが増えたぶん、時間が余計に掛かるようになってきました。貯金を節約しようと、歩くピッチを速めてペースを底上げします。熱中症になりそうなので、腰に下げたフラスクから水を(ぬるま湯みたいですが)歩きながら摂取します。ガーミンのログを見ると、この区間は6分/kmから8分/kmといったペースでした。

「北相木村」の標識を通過しました。50kmから59kmの、だいたい半分ぐらいです。

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このあと、すぐに三叉路が現れます。北相木川に南相木川が合流する「川又」交差点。そこから59kmレストポイントまでは、このコース唯一のランナーすれ違い区間です。

道の反対側を下ってくるランナーたちのしっかりとした足取りに見惚れますが、こちらは早くもスタミナ切れ。脚も重くてなかなか言うことを聞いてくれません。50m走っては100m歩くような情けない状況が続いています。周りのランナーにも、じわじわと抜かれてゆきます。

それにしても、別々にスタートした連れ合いに出くわしません。もし先行しているならここですれ違うだろうと踏んでいましたが、一向に姿が見えず。私が川又に到着するよりも前に反対方向を通過したとも思えず。ならば今頃59kmポイントで休んでいるのか、それとも後ろから追ってきているのだろうか。・・・さすがに気になってきました。

12時前、北相木村役場の59kmレストポイントにたどり着きました。

野辺山ウルトラマラソン2014

野辺山ウルトラでは、42km、59km、87kmのレストポイント3箇所の中から2箇所を選んで、着替えなどの荷物を置くことができます。私は42kmは最初から通過する予定だったので59kmと87kmの2箇所を選び、どちらにもウェアとサプリ類を預けてありました。

長時間のタイツ装着で腹部が締め付けられているのが胃痛の一因と考え、ここでタイツを脱ぐことにします。ついでにソックスとアンダーも着替えて、胃が落ち着くのを待ちながら手持ちのサプリを少し消費。預けてあったサプリを、代わりにポーチに詰めました。

失敗だったのは、アイシングスプレーを荷物に入れなかったこと。沖縄マラソンも、那覇マラソンも、えちご・くびき野ウルトラマラソンも、エイドにアイシングスプレーが豊富に用意されていました。それで、なんだか長距離レースではそれが普通であるかのように勘違いをしてしまい、エイドに置かれていないことを全く想定していなかったのが敗因でした。仕方なく、かぶり水で膝を冷やしますが、シューズを濡らさないように掛けるのは難しく、面倒でした。シューズは乾きにくいし、濡れたまま走るとマメなどのトラブルを呼び込むリスクが増えてしまいます。

着替えとサプリ摂取、アイシングを含めて、ここではたっぷり20分ほど休んでから出発しました。川又までの戻り道は下り基調なので、頑張って走りメインで行きます。

レストポイントを出て間もなく、反対側を登ってくる連れ合いから声が掛かりました。走りを見るかぎり元気な様子ですが、しきりに「脚がやられた!」と訴えています。心配していた故障の予兆が出てしまったようです。「次でやめる」というので「分かった」と頷いて先を急ぎます。残念だけれど、仕方ありません。最後まで走り通すのと引き換えにこれからの半年、一年を棒に振るのは、あまりに馬鹿げてます。ここは勇気を持ってリタイアすべきです。

彼女の悔しさも背負って最後まで絶対に走り抜こうと、心に誓います。

川又から71kmレストポイントまでは、再び上り基調になります。まだ峠ではないので、斜度はそれほどきつくないはず。なのに、もう今すぐ止めて、途中の滝をのんびりと眺めつつ、温泉でくつろぎたい気分。なぜか首と肩がバリバリだし、歩くだけで脚はそこかしこ痛いし、おまけに暑さで息切れ気味です。

小さな祠と立派なケヤキに、ふと立ち止まります。心が洗われるようです。

野辺山ウルトラマラソン2014

日差しがきつく、体力を消耗します。木陰を目指して走り、日陰は歩くという繰り返しになってきました。

野辺山ウルトラマラソン2014

暑い!暑い!暑い! 周りのランナーたちも、前の人につられるかのように、日陰を求めて右に寄ったり左に寄ったり。私よりは走っていると思いますけど、多くのランナーが走ったり歩いたりを繰り返しています。

14時11分過ぎ、滝見の湯レストポイントに到着しました。

ここでゴールを迎える71km部門のランナーが、正直、ちょっぴり羨ましい。完走のご褒美メダルのうえに、温泉とは!

野辺山ウルトラマラソン2014

ここまでそんなに食べてませんが、どうにもこうにも食欲が無く、そばは断念。手持ちのサプリをひとつ開封して流し込み、スポーツドリンクを少し摂り、フラスクを水で満たし、かぶり水で首筋と膝を冷やし、そして、なけなしの勇気を振り絞って出発します。

ついに、地獄の入り口(?)にたどり着きました。ここまでの上り道で十分きついと感じたのに、野辺山で一番の難所だという馬越峠はいったい、どれほどきついのやら。

野辺山ウルトラマラソン2014

馬越峠は、林に囲まれた涼しげな、そして静かな道でした。クルマが入れる普通の道のはずですが、センターラインが無くても困らない程度の交通量しか無いようです。

しかし斜度はそこそこあり、もうとてもじゃないが、走る気が起きません。事前に立てたここでの目標、10分/kmで峠の上り坂を乗り切ろうと必死にもがきますが、両膝は鉄アレイのように重く、まるで強制連続スクワットをやってるような感じです。でも、この痛みに負けて一度でも立ち止まったなら、きっとそこでレースが終わってしまう。何がなんでも、止めるわけにはいきません。

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私を含めてほとんどのランナーは歩いていますが、ゆっくりと走りながら抜いてゆく凄いランナーが、たまにいました。ペースはどうあれ、ここを走ろうとするだけで尊敬してしまいます。まして、そのまま後ろ姿が見えなくなるまで走り続けるとは、どういう体力、気力の持ち主なのか。もはや超人としか思えません。

頑張って歩を進めますが、そのうち胃の痛みに代わって今度は急激に気持ちが悪くなってきました。10分/kmを無理に維持しようとすると、強烈な吐き気に見舞われます。仕方なく、何とか吐かずにすむぐらいのペースまで落としてゆき、最終的には13分/km前後にまで落ちてしまいました。もう限界です。

登れども登れども、頂上はなかなか見えてきません。途中でエイドが現れますが、ここはまだ上りの半分とちょっとぐらいだと聞いて、がっくり。募る嘔吐感に負けて一休みしますが、あんまり休むと間に合わなくなるのは目に見えてます。回復具合もそこそこに、エイドを後にします。

途中、何台かクルマを停めたママたちからの応援を受け、気分だけでペースはぜんぜん上がりませんが、少しだけ元気を取り戻しました。なおも登り続け、さらに2kmほど歩いたでしょうか、ついに!頂上の79kmエイドが見えてきました!!

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食べるのは無理です。でも、もう残りはハーフの距離。しかも、しばらくの間は、脚さえ持てばラクにペースを稼げる下り坂。下りきった少し先には87km地点、川上村のレストポイントもあります。ここで食べなくても、困りません。

川上村のレタス畑でしょうか、雪のように白く輝くビニールに一面覆われた里の景色を眺めつつ、ひたすら吐き気が和らぐのを待つことにしました。

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そんな折も折。連れのラン友に声を掛けられました。

「おおお、こんなところで出会うとは! 元気そうだね!」
「この時間にここまで来てれば大丈夫、あとは歩いても完走できるよ。」
「そっかぁ、もうひと頑張りだね。でも、胃が気持ち悪くってペース保てなかった。」
「胃薬持ってるよ、あげようか?」
「いや、いま少し休んで楽になったから、なんとかいけると思う。」

短い会話を交わした後、元気に坂を下りてゆく彼女を見送ります。力強くも軽快な、じつに美しい走り! このまま引いて貰えればと付いてゆこうとしますが、またすぐに吐き気がこみ上げてきます。たまらず減速し、しばらくは歩くことにしました。

脚力をほとんど使わずに歩くうち、胃も少しずつ楽になった気がしてきました。懸念していた足底も痛みが出そうな気配がありません。えいや!っと走り始め、あとは勢いに任せるように走りました。少し先で、先行していた彼女に並び、「胃は大丈夫?」「ダメみたい^^;」とか何とか応えつつ、「また下で!」と交わしてゆきます。

下り坂がついに終わるあたりで、川を渡して掛けられた見事な鯉のぼりたち。やった! 馬越峠をついに越しました!

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ここからは、やや狭くまっすぐな一本道を、千曲川沿いに進みます。

わずかながら下りなので苦しくはないのだけれど、川上村原公民館に設けられた87kmレストポイントまで、たいした距離でもないはずの道が、先が見通せるだけにやたらと長く感じられます。

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ほどなく追いついてきたラン友女史としばし並走し(相変わらず良い走り!)、しかし峠の下りでスタミナを使い果たした私は、パワーみなぎる彼女に先に行ってもらいました。

ようやく、87kmエイドに到着です。

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ここで最後だからと、うどんに手を出して大失敗。三口と食べぬうちに、またもや強い嘔吐感に見舞われました。ここで再会したラン友の彼女は、救いの神、いや女神様でした。手持ちの胃薬を快く頒けてもらい、気持ちもぐっと楽になりました。これで何とか希望を繋げるかもしれない。「先に行くね!」と軽やかに飛び出してゆく女史を見送ったあと、再び歩き始めました。

峠で聞いた「歩いても完走できる」の言葉を頼りに、ときどき走りを交えつつもキホン早歩きで先を急ぎます。再びペースを上げて走り始めたランナーたちに、次々と抜かれました。でも私はペースを上げて走れません。首も肩も背中も限界で、フォームを作れなくなっています。両脚はとっくに限界を超え、動かし続けるのは根性入れないと無理。だけど下手に根性入れ過ぎると、こんどは致命的に攣ってしまいそうな気配が濃厚です。おまけに胃袋が、いつまた機嫌を損ねるか分からない。

終盤とはいえ、油断するには早すぎる。まだたっぷり10kmは残っています。どうやって乗り切るか。普段ならわけもない10kmだけれど、身体がこの状態では・・・。

90km計測ポイントの手前から、道は再び緩やかな上り坂になりました。手元のガーミンを使い、精一杯の早歩きで1kmのラップを取ってみました。9分37秒。時刻は17時25分20秒。残された時間は・・・えーっと。ざっと1時間半、90分か。このペースで歩いてもぎりぎり何とか間に合うと、霞む頭ではじきました。

実のところ、苦しい歩行をあと1時間半続けるよりも、この先の数キロを走り通して少しでも早く楽になりたいという誘惑さえ、ありました。でも客観的に考えて、鉛のような脚で走って万が一にも何かしらのトラブルに見舞われたなら、リカバリーは限りなく難しいでしょう。ここまで来たのに、ゴールを前にして終わるかもしれない。それだけは絶対に避けなければ! 歩いても間に合う場面であえて無理してリスクを取る余裕など、もう本当に無いのです。

暮れなずむまちの光と影のなか、残る力を振り絞る健気なランナーたちに次々と交わされてゆきます。妙なもので、歩く私につられるのか、追い抜いたとたんに歩き始めるランナーが何人かいました。でもそんな人でも、ものの1分もすると、また走り始めます。逆につられて走りだそうとする自分を抑え、だが決して歩を緩めることなく、前へ、前へ。

黙々と歩きながら、計算が間違ってるんじゃないだろうかと、ときどき不安に駆られ、さっきの計算を繰り返します。でも間違うときは、何度計算しても同じように間違えるんだろうな、とも思う。みんな、何であんなに先を急ぐのだろう? もう時間が無いんだ。仮定したとおりに、9分半で歩けているのだろうか? 何度もペースを測ろうとしますが、そのたび1km通過を見落として測れず、気ばかりが焦ります。時計はGPSだから秒単位で正しいはず。でも肝心のいま、本当に合ってるのだろうか?・・・さっきから堂々巡りだと分かっているのに、同じ考えの繰り返しから抜けられません。

脚の痛みや呼吸の苦しさより、頭のなかを巡る不安のほうが苦しくなってきました。

93kmか、それとも94kmぐらいだったでしょうか。路傍にクルマを停めた私設エイドの方の目の前を一瞬行き過ぎ、ふと気になって1メートルほど取って返しました。「どうぞ食べていってください。両手でいっちゃって。」「いただきます!」・・・うっわぁー、おいしい! 「これ何ですか?」「自家製のゆずゼリーです。」「ありがとうございました!」 ほんの10秒のできごとでした。

でも、なんということでしょう。今にもくじけそうだった心のなかの重苦しさが、何故かすっかり晴れていました。瞬時に取り込まれた糖分のおかげか、心をほぐす会話の力なのか、いったい何が起きたのか分からない。ただ、なんだかとても心が軽く、不思議な至福に満たされた気分なのです。

計算は絶対に合ってるという妙な確信が、そして最後までペースを緩めずに必ず歩き通せるという自信が、いまようやく戻ってきた。そのことに気付いた瞬間、突然、涙が溢れ出てきました。・・・絶対にいける!

半べそかきながら歩くランナー。周りから見たら、ちょっと変なヤツです。それに気付いて急に可笑しくなり、へ、へ、へ、と独り笑い。さらに変なヤツになってしまいました。自分で言うのもなんだけど、ちょっと頭がおかしいです。

フィニッシュゲートの明かりが右手に見え、「○○さん、お帰りなさ~い!」というアナウンスが間近に聞こえてきます。ここでコースは無常にもゲートに背を向けて左折してゆきます。でも、はなから分かっていることなので、気にしません。コーナーに立つ誘導係の人に誰かが、「あと何キロですか?」と尋ねています。「あと4.3km。」 手元の時計を、たいした意味も無くチラ見しますが、計算はしません。だって、もうその必要は無いし、それに小数点同士の掛け算なんて無理です。(^^;

まっ平らな最後の迂回コースを無事に全部食べ終わり、とうとう踏み切りまで戻ってきました。フィニッシュ地点は見えないけれど、もう残すところ数百メートルのはず。・・・と、誘導員の方が、こちらを見て何か、指示をしようとしているではないですか。・・・まさか! 停められる? 走るな、自分! 来るな、列車! 来るな!来るな!来るな!・・・「はぃ、どうぞ!」 よかった! 停めるための指示じゃなかったんだ! コースが続く方向へと手招きされた瞬間、どっと安堵が広がりました。

時計は18時55分? いやいや56分を廻っています。予定よりちょっとだけ遅かった気がするけれど、でももう不安はありません。たくさんの人たちが「お帰りなさい!」「おめでとう!」と祝福してくれる中を、ゆっくりと、まっすぐに進んで行きます。我慢に我慢を重ねた早歩きは、自然に走りへと変わりました。

最後の交差点に差し掛かる手前で、ブルーの計測シートを踏み越えます。その直後、フィニッシュゲートのあたりから「macnutsさん、お帰りなさ~い!」と聞こえてきました。今度こそ、自分の名前が呼ばれています。あれほどゴールを確信したのに、何かの夢を見ているような、信じられない気持ちです。交差点の角を曲がり、ゲート前を駆け上がってゆくと、コースに飛び込んでくる彼女の姿が目に入りました。「間に合ったね!」

頭のなかの片隅で「計算は合ってた!」とアホみたいに冷静に考えながら、もう片隅では湧き上がって収まらぬ興奮で頭が真っ白になり・・・何がなんだか分からない状態で、ゲートをくぐったのでした。

野辺山ウルトラマラソン2014




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  コメント


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お久しぶりです。
100キロウルトラマラソン、過酷さと達成感が伝わる記事でした。
自分は最近、トレランもどきから入って、ランも楽しくなってきました。
ガーミンの220jを購入しましたが…
最近は国産も頑張ってますね。

コツコツと身体を作って
いつかはサブ4を!と夢みてがんばります(^^)

とら太 | URL | 2014年06月25日(Wed)21:22 [EDIT]


お久しぶりです! コメント、ありがとうございます!

とら太さん、やっぱり山から入る人ですね。(笑)

こないだ、我が家の山ガール(?)に引っ張られながら山道を走ってみましたが、すっかり置いて行かれるわ、筋肉痛が抜けないわで、なかなか大変でした。^^;

脚の具合、その後はいかがですか? かなり回復されたのでしょうか。

山がベースのとら太さんなら、ロードならサブ4どころか、もっと上を目指せますよ。ロードよりもトレランのほうが、とら太さんには楽しいかもしれませんけど。ラン系の記事も楽しみにしてます!

macnuts | URL | 2014年06月25日(Wed)23:19 [EDIT]


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